2015年11月24日火曜日

エデン・外伝2~もうひとつのオキマル採集記~

1日目、9月24日、午後6時。
 
 
LCL旅客機のタラップから降り、沖縄の地に足を下ろす。
 
 


奇しくも台風と共に琉球に上陸する事になってしまったが、ここまで来たら最後、後戻りは出来ない
 
 
なにせこの日のために6月から資金を貯めてはるばる此処までやってきたのである
 
 
気を取り直して計画を立てる
 
 
台風が接近するのは3日目の晩、26日夜である。
つまり、今日と明日の2日間がチャンス。
 
これを逃せば、林道が風雨にさらされることとなり、車内から路上を徘徊するマルバネを発見するのは困難となる。
そもそも、雨の中マルバネが徘徊していない可能性もある。
 
 
1日目は、友人の情報の中でそれまででもっとも多くの個体数が得られていると思われる、南部の林道を中心に攻めていく
 
 
オキナワマルバネは、発生初期~中期においては主に日没から日の出にかけてに徘徊し、この中でも日没から22時までが最も観察例の多いゴールデンタイムとなる。
 
 
同じ道を黙々と往復し続ける
 
 
 
........いない
 
時刻は21時。刻々とせまるタイムリミットに、焦燥感が高まる
 
車内でのカラオケにも自然と力が入る(一つのアルバムをずっとローテ)
 
2曲目がサビに入る直前、ヘッドランプに黒い塊が照らされる
 
 
ん.......?
 
こ、これは............ッ!
 
 
 
 
 
........オキナワヒラタ(♀)かよッ‼
 
 
しかしこの種も沖縄ならでは。本土では出会うことのできない種である
 
 
そうはいってもここまで来てのこの状況、気分的には年末ジャンボの当選番号が一ケタだけ違っていたような残念感.......
 
 
結局この日はこれぐらいしか収穫はなく、かすれた目で朝日を拝むこととなった。
 
 
 
2日目、9月25日。
 
台風の進路が予報通りであれば、これが最後のチャンスである
 
 
日中は車内でしっかりと休養をとり、夜戦への準備を進める。
気分はルンガ沖夜戦である。(艦これ最近ログインできてない)
 
 
18時の日没に合わせてやんばるの森へ車を向ける
 
 
今回は昨日より行動範囲を広げ、南部のより広範囲を探索していく。
 
 
車から降りて側溝をチェックしていると、現地の採集者と思われる方から声を掛けられる
 
私「こんばんは、お疲れ様です。何か採れましたか?」
 
採集者さん「うーん、今日は芳しくないけどね。採れましたよ、昨日
 
私「本当ですか!」
 
採集者さん「こいつが大歯型。小さいけどね」
 
うおおおおおおおおおおまじですかああああああああああ!!!
 
生でみる大歯型。60mmであるがその迫力は十二分。
 
 
 
今の私には刺激が強すぎる........ッ!!!
 
 
心優しい採集者の方と別れを告げ、改めて気合いを入れる
 
ここ沖縄の地に来ている以上、この目に映る大歯型はこの手で採ったものでなければならない。
 
 
気を取り直し、再び流しを続ける
 
 
行動範囲を広げたのが幸いしてか、昨日よりも目に入る昆虫の量が多い。
 
 
 
オキナワヒラタクワガタ(♂)
 
 
ヤンバルクロギリス
 
それらを物色していると、あっという間にゴールデンタイムは過ぎ、日付が変わる
 
 
ここまでくると採集者の数は目に見えて減る。
長期滞在している人や現地の人にとっては、早めに切り上げて体力温存をしていくのも当然といえる。
 
しかしこちらはそうはいかない。今日を逃せばもうチャンスは絶望的なのである。
 
 
深夜となっても一縷の望みに賭け、ただひたすら道路を注視してハンドルを握り続ける。
 
 
時刻は既に午前3時。
 
疲れからか、意識がだんだんと薄れていく
 
運転している以上、居眠りは厳禁。流石に休憩しなければ不味い。
 
 
そう思い、一旦戻ろうとアクセルを緩めたその時。
 
 
 
 
 
 
 
.............いる。
 
 
 
 
 
 
 
 
確かにそこに、いる。
 
 
僕は震える手を押さえ、冷静にパーキングブレーキを引き、ドアノブに手を掛ける
 
 
 
 
 
...............はずはなく、
 
 
「うわっひょおおおおおおおおおおおおいたぞおおおおおおおおおおおおおおお」
 
小躍りでドアを跳ね開け、車外に飛び出る
 
地面に頬ずりせんばかりに近づき、その黒光りする物体を確認する
 
 
緊張のためうまく写真がとれない。
 
 
そう、これこそが人々を魅了するやんばるの黒い宝石
オキナワマルバネクワガタである。
 
サイズこそ小ぶりなものの、まごうことなき本物。
 
 
 
最後の最後に神様が与えてくれた幸福に、ただただニヤニヤして喜ぶS
 
 
改めて車に戻り、明かりの元で成果を再確認しようとする。
 
・・・・・・あれ?
 
 
 
車、動いてね?
 
 
ああああパーキングブレーキかけてなかったあああああああ
 
 
 
 
これにて台風前最後の採集は終わり、残りの日をネカフェで悠々と過ごす。
 
 
 
 
 
 
...................はずもなかった。
 
 
次回、衝撃の展開!
 


0 件のコメント:

コメントを投稿